特命報道記者2011
ベラルーシ原発推進・放射線障害データを隠ぺい

チェルノブイリ原発事故の犠牲者を隠し
原発を推進するベラルーシ政府

特命報道記者2011 フジテレビ

報道記者には伝えなければならない事実がある

福島原発20キロ圏内 浪江町の現状を取材
20キロ圏内の家畜を薬物注射して殺処分した。

動物保護団体、高邑(たかむら)勉 民主党国会議員
民主党の高邑勉議員が南相馬市の桜井市長らとともに
「サンクチュアリ・ファーム構想」を提案

高邑氏
「大型の哺乳類が、被ばくし続けていくとどうなるかといったデータが世界のどこにもない。
ここは、そうなってしまったところだから、
環境放射能の中に牛が生息して一体どういう染色体異常を起こしていくのか
果たして起きるのか起きないのか判らないことですから、
それを無条件に殺処分するというのは、あまりにも能がないというか
農家さんの気持ちにも反することです。」

11月8日 ウクライナ・キエフ市

チェルノブイリ原発事故後の現状を取材

ウクライナ政府 非常事態省 役人ウラジーミル氏が同行

彼の案内なしに取材は許されない。

チェルノブイリ原発
現在3500人もが職員として働いている。
発電をしない原発で3500人も働いている。

「何も生み出さないけど、原子力を管理するには人がずっと必要なんです。
ここは、マッチ工場じゃないんだから」

3500人もの従業員は一体何をしているのか?

オペレーションルーム
「使用済み燃料を保管するプールを管理しています。
ここで、温度や水位を監視して制御しているんです」

何も生産することのない施設で、25年後の今も使用済み燃料の管理を続けなければならない現実。


燃料を放置は出来ない。20年~30年後 日本も同じ問題に直面するでしょう。


国土の20%以上が汚染されたベラルーシを取材
人々の健康と食生活は?

ベラルーシは、1991年旧ソ連から独立
1994年以来17年間アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の独裁政治が続いている。

取材には、運転手を兼ねて ベラルーシ政府職員 
アンドレイ氏が同行(日本語を理解できる)


ブラギンの畜産農家を訪問
3日に一度検査をしている。
牛乳の汚染状況
1キロあたり18~30ベクレル 100ベクレルの基準値以下
先月、誤って汚染された牧草を与えてしまい数値が跳ね上がり
しばらく100ベクレル以上が続いた。


近くの森で取れた普段食べているという乾燥きのこを食品検査場で検査。
3241ベクレル。 1キロ当たりに換算すると2万2351ベクレル
基準値の10倍以上の数値が出る。

食品検査場の職員

平均すると、検査するものの15%は今も汚染基準を超えている。

事故から25年たっても汚染された食材はなくなっていない現実。

内部被ばく

セシウム137は、筋肉に多く含まれるカリウムと似ていることから筋肉へ
ストロンチウム90は、カルシウムに似ていることから骨に蓄積してしまう。


こうして体内から出る放射線に常にさ細胞がされる状態を内部被ばくである。

この内部被ばくが健康に及ぼす影響について
WHO(世界保健機関) IAEA(国際原子力機関)が認めているのは、
ヨウ素131が甲状腺に溜まって引き起こす甲状腺癌の増加だけである。

その他は、データが少なく影響が定かでないというのがその理由だが、
実態はどうなのか?

病院を取材したいと言うと、ベラルーシ政府はある病院を手配してくれた。
全国放射線医学 人間環境科学実用センター

迎えてくれた医師が不思議な言葉を口にした。


「全国放射線医学 人間環境科学実用センターは、2002年に新しく建てられました。
みな、
大統領のおかげです。

汚染地に住むという患者
「事故直後の1986年に現場の近くで働いていました。
住民が避難した場所で、水や植物にどれだけ放射性物質が入っているかチェックしていたんです。

虚血性の心臓疾患と血圧も高く、そして非常に足が痛いんです


しかし医師は

それらの病気は、放射線とは関係ありません。
彼らにかかった大きなストレスが原因でしょう。


案内してくれる患者のどの症状も放射線とは関係ないという。

別の医師に聞いても

取材ディレクター
「ここは放射線病院と看板に書いてありましたけど
今、
放射線とは関係のない病気の人たちばかりなんですね。

女性医師

はい、放射線に直接関係はありません。
普通の病院と一緒です。」

それは、もはやこの国に放射線による健康被害はないということなのか?
ベラルーシで、放射線が体に与える影響について論文を書いている女性医師に聞いてみることにした。
チェルノブイリの子供の食物摂取におけるセシウム137と心臓血管疾患の関係性」著

ウクライナ人のコーディネーターに電話をしてもらう。
女性医師

「事故の後、
心臓障害は2倍~2.5倍に増えました。
考えられる原因は、食べ物に含まれるセシウム137のせいなんです。
月曜日は午後の勤務なので午前中ならあなたに会えます。
是非あなたにあって本当のことをお話したい」

病院で聞いた話とは正反対だった。
しかし、私達はこのとき大きなミスを犯していた。

先ほどの電話をベラルーシ政府の職員であるアンドレイに聞かれていた。


翌朝再び女性医師に連絡を取ると、
取材は受けられません。
理解できないかもしれないけど、あなたは取材して帰るだけ
私は、ここで生活しなければならない。

その代わりウクライナにいる私の夫バンダジェフスキーに聞いてください。
夫なら真実を話せます。」


何かがおかしい。
この国で何が起きているのか?


私達は、監視役の運転手をホテルに残したまま
市内のゴメリ市産科病院に飛び込んだ。

セルゲイ医師
「病院を案内します。ここには、赤ちゃんの集中治療用の保育器が9個あるんです。」

9個の保育器には全身を管で繋がれた赤ちゃんで一杯だった。

セルゲイ医師
「ここには、州全体から
先天性障害のある新生児が送られてきます。
つまり、このような重病に赤ちゃんが一番多いんです。」

「この子は重大な
先天性肺炎と肺出血があります。」

「この子は
溶血病があります。」

「この子は
心臓中隔欠損です。
今すぐ手術の必要はありませんが、心臓の音が異常です。」
先天的に心臓の右心房と左心房の間の壁がないという重い心臓の病。

「この病院だけで1年に5人~10人、内2.3人は手術を受けます。」

管理職の女性医師
「そんなの世界平均と変わらないでしょう。
最近は新しい機械が導入され、妊婦の検査も詳しく行われるようになったので
事故前より多くの病気が見つかるだけで、別に放射線が関係ないんですよ。」

セルゲイ医師
この病院には、州全体の危険な患者たちが集中するとはいえ、

正常な赤ちゃんは全体の2%しか産まれません。

私の主観では、放射線はもちろん子供達に大きな影響を与えています。
放射線を浴びれば免疫は弱くなるんだ。
私達は、女性の子宮内に蓄積したセシウムの量を測ったことがあります。

日本の信州大学との協力でした。
もちろん通常よりも多いセシウムが発見されており
これから胎児えの影響を詳しく調べます
。」

長野県松本市 菅谷昭市長
平成5年信州大学医学部第二外科助教授昇任
平成3年より松本市のNGOグループによるチェルノブイリ原発事故の医療支援活動に参加、汚染地域における小児甲状腺検診をはじめとして現地にて支援活動を継続
平成8年ベラルーシ共和国に渡り、首都ミンスクの国立甲状腺がんセンターにて小児甲状腺がんの外科治療を中心に、医療支援活動に従事
平成11年高度汚染州ゴメリに移り、州立がんセンターで医療支援活動
平成13年ベラルーシ共和国での5年半に及ぶ長期滞在を終え帰国
長野県衛生部医監として就任
平成16年3月 松本市長就任

「よくセルゲイ医師は言ってくれました。

ベラルーシで原発を作るんですね。

ルカシェンコ大統領は、もし原発を作るのであれば
できるだけ原発の悪いことは言わないようにとかん口令を敷いたんです

4月21日
ベラルーシ  ルカシェンコ大統領

「原子力発電所は不可欠だ」
ルカシェンコ大統領は、原発の建設を急いでいいた。

セルゲイ医師はそんな危険を押して語ってくれたのである。

何で皆 ベラルーシで障害があることを隠そうとしている?
セルゲイ医師
「それがこの国のシステムだからさ。
僕には聞かないでほしい。」

帰り際一人の医師が言葉を掛けてくれた

バンダジェフスキー氏を訪ねてください。
彼なら真実を話してくれます。」

ウクライナ・イヴァンキブ
イヴァンキブ中央病院
ユーリー・I・バンダジェフスキー博士
ゴメリ医科大学の学長を務めた人物

「今の私は国外追放を受けた身です。」
1999年、汚職容疑で逮捕。
政治的、意図的な冤罪だとして抗議が殺到。
海外の人権団体が猛烈に抗議。
5年の服役の後、国外追放となり、
海外で研究活動を続けている。

その逮捕の直前に発表されたのが、

汚染地で亡くなった人の臓器を取り出し、セシウムの量を調べた世界で唯一のデータ。


さまざまな臓器に溜まったセシウムの中で注目は、心臓。

特に子供から600ベクレルを超える高濃度のセシウムが検出されている。

臓器にセシウムの量が多ければ多いほど、心電図の正常な子供が少なくなることを示している。

臓器が74~100ベクレル汚染されると、
心電図が正常な子供は1割程度しかいない。

バンダジェフスキー博士
「驚かせたくないのですが、すでに日本の子供の心臓から20~30ベクレル見つかっています。
これからもまだまだ増えるでしょう。」

ベルラッド放射能安全研究所 ウラジーミル・バベンコ副所長
「日本人はとてもルールを守る人たちなので、
日本の25年後は、チェルノブイリの今より相当被害は少ないと思います。」


ウクライナ・小児心臓外科医療センター
心臓手術を受ける女の子 ユリアさん15歳

北ウクライナ 汚染地帯の出身の虎児
汚染地で産まれたということだけ知らされ
産まれた時から顔に出来ていた腫瘍と一人戦ってきた。
「実は、子供のときから心臓の病気があったみたいなんですが、
誰も気付かなかったんです。
10月に初めて病気が分かってすぐに手術をしないといけないって言われました。

でも、この半年で4回も顔の手術をしているから、もう慣れています。」

執刀するのは、この病院のウラジーミル理事長

ウクライナにおける心臓外科医の第一人者
「彼女の心臓弁膜省という病気は、

チェルノブイリ事故の後、実感として確実に増えています。
しかし残念ながら客観的なデータがありません。


医師の実感としては増えているが、データがない。
そのため、患者達はあくまで患者であり被害者ではない。

ベラルーシでもウクライナでも聞いた同じセリフ。
実感はあるがデータがないという言葉は何を意味しているのか?

私達がいたこの二日間で子供の心臓手術は4件。
親達は自分を責めながら、これまでの人生を過ごしてきた。

汚染された地に生き、我が子が病を持って産まれた時、
データがないという言葉はどう聞こえる のだろう。

私達日本人は、そして大人達は、これから産まれる新しい命を数十年間、守り続けられるのだろうか?

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